明治の建築を見ると部屋の用途によって扉の形状を変えていることに気が付いてから、古い建物の内部を見るとかならず扉を見るようにしている。こんかいは刑務所。この扉がすべてを物語っているように思う。つぎはぎだらけでまったくスマートでない。まるでフランケンシュタインに出てくる人造人間。実際に運用しながら、これはこうした方がいいとか話し合いながら改良に改良を重ねた結果・・・そんな風に見える。扉上下で石がむき出しになっているのも気になる。
さて順序が逆になったが、刑務所入り口しばらく通路をたどると最初はこんな感じの扉。ここはまだ不特定多数の人間が通るのか観音開きで上部にかまぼこ型の採光窓。これが棟の近くになると・・・
こんな具合に。観音開きではあるものの扉は視界を考慮してガラス張り。しかも扉の左右も壁ではなくガラス張り。上部はかまぼこ一切れ型でこちらも大きくガラス。まさに「監視」ありきの扉。プライバシーへの考慮は一切なし。開口部が大きく見え、ガラス張りだからといって開放的かというとそうではない。ガラスにかかる金属の格子が緊張感を与えてくれる。見事だ。
中にはかまぼこ型の扉もあった。こちらは炊事場に行く通路だったか。忘れてしまったがこちらの扉はプライバシーが守られているので不特定多数の人間が通行するのではなく、ある特定の人間のための通路のはず。
こちらは病棟の扉。人の胸あたりにハッチがついていた。こちらのハッチは独房の扉と違い下部に板がついているので物が置ける。やさしさを感じる。こういうハッチは神戸異人館の食堂と配膳室の間に備えられている館がある。
こうして見ていくと刑務所とはいえども、いろいろと用途が分かれるのだと改めて気付かされる。当たり前なのだが・・・。
さて、今回一番気になった扉がこちら。
なぜ刑務所にペディメントが?これは公官庁になればその庁舎の長のための部屋。異人館になると客や館の主を通すためのサイン。つまり襟を正して通る扉。それがなぜ刑務所に。中を見ると講堂のようだった。式典を行うための「公」の空間。そういう意味合いだととらえていたが、Twitterで面白いお話を伺えた。今回公開されていなかったが、以前は中に入れていた時期があったそうだ。そのときに「キリストの絵」が壁に掛けられていたという。それが本当なら「式典」というイベントよりも、もう少し緊張感のある意味合いがこの空間にあるのかもしれない。「宗教的」「精神的」な意味合い。ここはもう少し調べみようと思う。やはり扉が一番面白い。役割が特化されていると思っていた刑務所にまさかペディメントが載っているとは。五大監獄。面白い。